数年前、年金についてアンケートをとった。
「年金という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?」
回答をくれたおよそ30名のうち、前向きな評価をした人は1名だけだった。
「本当にもらえるのだろうか。」「遠い先のことなので関心がない。」という回答がほとんどだった。
無理もないと思う。
政府や厚生労働省がいくら「年金法の改正」を叫んでみても、国民はとっくに気づいている。「年金法の改正」とは、「保険料の値上げ」「年金額の引き下げ」と同じ意味を持っているということに。
いままで、年金制度は5年ごとに見直しをすることになっていた。見直しをすると、そのたびごとに財政の悪化が判明してしまう。そのため5年ごとに必ずマスコミが騒ぐという構図が出来上がってしまった。これはもともと厚生労働省の計算が甘かったせいなのだか、「さすがに毎回悪者にされるのはかなわん」ということで、2004年の法改正のときに、厚生労働省は自動的に年金額を下げられる仕組みを導入してしまった。
そんな大事な制度が取り入れられていたときにも関わらず、国会では民主党の菅直人や小泉首相の年金未納問題で大騒ぎというありさまだった。この未納問題は、国民年金のキャンペーンに出ていた江角マキコが、実は国民年金の保険料を払っていなかったという事件に端を発している。でも、今になってよく考えてみると、厚生労働省は年金未納と知りつつ、江角マキコを起用したのだと勘ぐりたくなる。そのドタバタのおかげで、本来なら議論が沸騰するはずの年金法案が、きちんと審議されることなく、国会で可決されてしまったからだ。法案が通って、厚生労働省の幹部は、ほっと胸をなでおろしたことだろう。
もし本当にそこまで考えていたとしたら、厚生労働省の役人達はおそろしく頭の働く連中だ。(たしか私の後輩も厚生労働省に入ったはずだが・・・・)
本来なら日本を二分するような議論が必要だった重要法案がもう通ってしまった。今回の参院選では、「消えた年金問題」が争点になったが、結局は何も変わらなかった。その間にも、確実に国民年金の保険料、厚生年金の保険料は上がっていく。
コインの表と裏
このような状況では、年金が悪者にされるのも無理はない。
私も年金制度に対して、怒りを感じていた。年金制度の問題点を指摘したチラシを作って、自宅近くの3000世帯に配布したこともある。こうでもしないと、怒りのやり場がなかった。
その後、年金制度に対する批判はますます強まった。2004年は、週刊誌の見出しには毎週「年金」の二文字が踊っていた。
電車に乗るたびに、中吊り広告の「年金」の二文字が目に飛び込んでくる事態はさすがに異常だ。このように議論が一方的になっているときは、反対の側から考えてみようとするのが私の性格だ。
そこで、「逆に年金制度によいところはないだろうか」と考えてみることにした。正直なところ、よいところを見つけるのは大変だった。それでもじっくり考えているうちに、年金について、いままでと違った面が見えてきた。
そもそも年金という言葉そのものには、何も悪い意味は含まれていない。年金はうまく機能すれば、老後の生活を豊かにしてくれる素晴らしい制度のはず。マスコミは一方的に年金批判を繰り返すが、それはコインの一面しかみていない。
コインは表と裏があるからコインなので(当たり前の話だが)、表だけでみていてもコインの全体像をつかんだことにはならない。年金について、その悪い面だけをみていても、全体像は見えてこない。
それでは、年金制度の表と裏とは何なのだろうか。(続く)
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第1回 年金を素直にながめる(その1)
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