シリーズ2回目では、「年金とはそもそもどんな仕組みなのか」について考えましょう。なおここでいう「年金」とは、いわゆる公的年金(国が運営に関わっている年金)、つまり国民年金・厚生年金・共済年金のことをさしています。


「公的年金=会員組織」


わかっているようでわかっていないこと。
それは「年金は積立ではない」という事実。

積立であれば、最悪のケースでも「掛け金=積立金」が成り立つが、年金の場合はそれは保証されていない。そもそも年金制度には積立という考え方はない。

それじゃ、年金はどのような仕組みなのだろうか?私の考えはこうだ。

「年金とは国民全員が強制的に加入させられる、国の運営する会員組織」

日本国民は20歳以上になるか、もしくは20歳以前に仕事を始めると、その時点で自動的にこの会員組織に加入させられる。そしていったんこの組織に加入すると、死ぬまで抜け出すことはできない。もし抜け出したいのなら、日本国外に脱出するしかない。日本国籍がなくなっても、年金から足を洗うことはできないというのが原則だ。

この組織のことを、仮に「NNK(日本年金会)」と呼ぶことにしよう。
「NNK」には、大きく分けて、次の2種類の会員がいる。

現役会員: 「年金会」の会費を支払っている会員。アバウトにいえば、20歳~60歳ぐらいまでの国民。

OB会員: 現会員として会費を支払ってきたが、現在は会費を支払わず、「NNK」から「老齢年金」という名前の配当金を受け取っている会員。だいたい60歳もしくは65歳以上の国民と考えてよい。

お金の流れについてみると、現役会員はもっぱら会費を払うだけ、OB会員はもっぱら配当金(年金のこと)を受け取るだけ、という関係にある。ただし、現役会員の資格でも配当金を受け取れることがある。たとえば障害状態と認定されたときは「障害年金」という名前の配当金を受け取ることができ、会員が死亡した時には遺族は「遺族年金」という名前の配当金を受け取ることができる。

OB会員が受け取る配当金は原則として現会員の会費でまかなわれる。運営者である「国」は、現会員から会費を徴収し、それをOB会員に支払うという作業をしている。つまり、現会員からいま集めた金を、そのときにOB会員に渡しているのである(もちろん、現会員からいくら集めるか、OB会員にいくら渡すかはルールで決まっている)。

ということは、「NNK」の仕組みには「積立」の考えはないことがわかる。
なぜなら現会員から集めた会費は、そのままOB会員の口座に入ってしまうのだから。

すなわち、OB会員が受け取ることのできる配当金(年金)の金額と、そのOB会員が納めた会費の合計額とは、直接の関係はないということだ(もちろんまったく関係がないというわけではないが)。仮にOB会員がそれほど会費をおさめていない場合を考えよう。OB会員の数にくらべて、現会員の数が十分に多ければ、会費がたくさん集まるので、その分け前としてOB会員は多めの配当金を受け取ることができる。逆に現会員の数がOB会員の数とくらべて、それほど多くなければ、OB会員の分け前は少なくなる。

結局のところ、配当金(年金)の金額を左右するのは、現会員とOB会員の比率ということになる。要するに「現役世代と高齢世代の比率」のことだ。すでにお気づきのことと思うが、この比率は一定ではない。日本では急速な「少子化」が進んでいるので、OB会員に対する現会員の比率は低下する一方だ。

参考までに、2005年現在の比率は、現会員10に対し、OB会員3である。つまりOB会員一人あたりの配当金は、3.3人の現会員の会費でまかなわれている。これがあと20年後(2025年)になると、現会員10に対し、OB会員5となる。2人の現会員の会費で、OB会員の配当金をまかなわないといけない。

この比率はほぼ間違いなく現実のものとなる。なぜかというと、20年後の現会員はすでにこの世に生まれてきているからだ。だから、将来は確実に予想することができる。

2025年に、あるOB会員がこう思う。「私も20年前のOB会員がもらっていたのと同じぐらいの配当金(年金)をもらいたいな。」この人の希望をかなえてあげるために、そのときの現会員の会費はいくらになるのだろうか。

仮に、2005年の会費が現会員一人あたり3万円とすると、10人分で30万円。それを3人のOB会員で分けるので、一人当たり 10万円となる。2025年にOB会員一人が10万円の配当金をもらうとすると、5人分で50万円。それを10人の現会員でまかなうのだから、一人あたりの会費は5万円。

会費は3万円から5万円アップする。割合にすると、約1.7倍だ。

さて、この会費値上げを現会員はOKしてくれるのだろうか。正直言って、無理な話だろう。2025年には年金だけでなく、税金の負担も重くなっているはずだから。

ただし、ここではその話には深入りしないことにする。

シリーズ第2回目で言いたかったことは、「年金制度を会員組織として理解するとわかりやすい」「結局、分け前(配当金)の金額は、現役世代と高齢世代の比率によって決まる」ということ。「年金とは積立ではない」ということがわかってもらえれば十分です。3回目では、ちょっと違った角度から、年金制度をみていくことにしましょう。

 第2回 年金を素直にながめる(その2)
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